2021年11月12日、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、厚生労働省の副反応検討部会が、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の積極的勧奨の再開を妥当であるとする結論をとりまとめたことに対して、抗議の声明を公表し、厚生労働記者会において、会見を行いました。
以下は、勧奨再開の問題点を解説した水口真寿美弁護士(全国弁護団共同代表)の発言要旨です。
会見配付資料一式は、こちらからご覧下さい。
水口真寿美弁護士(全国弁護団共同代表)
以下の資料は、先程の声明の中で申し上げた、副作用被害救済制度で、年金等の給付の対象となる障害認定を受けた方々の認定頻度を、他のワクチンと比較したものです。
HPVワクチンが主要なワクチンに比べて圧倒的に障害等の認定を受ける方の頻度が高いということが如実に出ているということがわかっていただけると思います。
私たちは、副反応が全くあってはいけないということを言っているわけではありません。どんなワクチンでも副反応はあります。けれどもこのHPVワクチンの副反応は、この表が示す様に、非常に重篤なものが高頻度で発生するということ、このことを問題としているわけです。そしてその方達に対する治療の方法がないということです。
今日、副反応部会で、再開にあたってさまざまな施策が必要だと議論がされていましたけれども、一点重大な欠落があるのは、今日の議論の中に、治療法の研究開発という視点が全くなかったということです。
医療機関の質とか数を増やしても、そこへ行ってどういう治療を受けることができるのか。
今治るための治療がない、そのことに被害者は1番苦しんでいるわけです。
しっかり研究費をつけて、そして研究していただきたい。これは被害者の切なる願いです。
今日の副反応部会の検討の中で、多くの協力医療機関において、過去2年半の間、副反応の被害者の受診がないという調査結果が報告されていました。前回の10月1日の副反応部会で厚労省は診療実態を報告できなかったわけです。
それで慌てて、そのあとの10月13日から11月2日の間に、協力医療機関にアンケート調査をした。回答率は72%。副反応部会では高い回答率だといっていますが、協力医療機関84しかない中で、なんで回答できないところが3分の1近くもあるのか。
しかも多くの医療機関は患者さんを診ていないんです。なんで診ていないのかという原因の分析は今日されていませんでしたけれども、その理由が、今日お配りした資料の中にあります。
【HPVワクチン薬害訴訟原告128名の実態調査報告より(2020年2月・弁護団調べ)】
今日、被害者が言っていましたけれども、協力医療機関を受診しない理由は、そこに行ってもきちんと向き合った治療してくれないからです。協力医療機関に行っても詐病扱いされるからです。そういう実態があるから、被害者が受診しない、これが現状なのです。
そういう実態も分からずに、厚労省が「現在一定程度の治療体制がある、それをさらに強化していく」と言っているのは、全く実態からかけ離れた絵空事です。
改めて申し上げたいのですが、定期接種ワクチンというのは基本的に積極に勧奨することを前提に認定してます。これが積極勧奨中止になった。
それを再開するのに、これだけ審議会で審議して「医療機関に研修しなくてはいけない」「関係機関と連携をとらなければいけない」「慎重にやって様子を見ながらやりましょう」という議論を今日していたわけですが、そういう体制をとらなければ積極勧奨ができない定期接種ワクチンが他にありますか。
こういう議論をしなくてはならないということが異常です。
そういうワクチンの積極勧奨を、これからリスクを犯しながら再開して、なにかあったらもう一度見直しましょうという、すごく乱暴な議論が行われている。
そのことを大変私たちは憂慮しています。