国のリーフレットの情報不備は自治体のホームページの記載からも明らか~HPVワクチン薬害名古屋訴訟報告集会より

オンライン報告集会のメイン会場で司会を務める伊藤麻衣子弁護士
オンライン報告集会のメイン会場で司会を務める伊藤麻衣子弁護士

 2021年5月18日、HPVワクチン薬害名古屋訴訟の期日が開催されました。
 前回に引き続き、今回も新型コロナウィルスの影響により、公開法廷での口頭弁論期日ではなく、弁護士のみによるオンラインでの手続きとなりました。
 当日午後6時より開かれたオンラインでの報告集会では、今回も全国各地から多くの方々にご参加いただき、大盛況となりました。

 集会の冒頭では、HPVワクチン薬害訴訟名古屋弁護団代表の堀康司弁護士より、名古屋訴訟の進行状況を説明した上で、前回期日から当日までの情勢の解説を行いました。

 この解説では、スライドを用いながら、4月15日に自民党の議連と厚生労働大臣に対して積極勧奨を再開しないように要請を行ったこと、原告自身の声を動画でも社会に伝える試みを続けていること、地方議会の議員の方に向けたオンラインでの勉強会を重ねていることなどを紹介しました。

名古屋原告落合晴香さんの動画によるメッセージに皆で耳を傾けました
名古屋原告落合晴香さんの動画によるメッセージに皆で耳を傾けました

 また、4月20日には、参議院の厚生労働委員会において、薬害エイズの被害者として医薬品の安全の問題について長年取り組んできた川田龍平参議院議員が、HPVワクチンを取り巻く様々な問題について、厚生労働大臣らに対して鋭い質問を重ねています(議事録全文はこちらから読めます)。

 こうした状況についても、弁護団からオンライン集会に参加されたみなさんに説明しました。

 現在、国は市区町村に対し、HPVワクチンの「情報提供」との名目で、HPVワクチンの接種対象者に対する個別の情報送付を行うように求めています。しかし国の作成した新しいリーフレットでは、国が今もHPVワクチンの積極的な接種勧奨を中止していることが書かれていません。そのような資料を送付すれば、受け取った側では、あたかも接種が勧められていると受け取るであろうことは、誰の目にも明らかです。

 今回の報告集会では、主要な自治体のほとんどがHPにおいて勧奨中止の事実をあえて明記しており、リーフレットの情報では不備があることについて、主要な自治体がそれぞれ問題意識を持っていると考えられることについても報告を行いました。

 今回のオンライン集会には、札幌市議会から篠田江里子議員、加須市議会から池田ゆみこ議員、焼津市議会から秋山博子議員、稲城市議会から村上洋子議員、浜松市議会から鈴木真人議員にもご参加いただき、各自治体において、HPVワクチンの個別情報提供がどのように行われているのかという実態や、これに対する各地の議員の問題意識などについて、ご発言をいただきました。

 市民に最も近い立場にある地方議員の関係者の方々の間でも、自治体を通じたHPVワクチンの事実上の接種推進がなし崩し的に進められている現状への問題意識が高まっていることを、強く感じることができる集会となりました。お忙しい中にも関わらず、ご参加いただいて被害者に温かいメッセージを寄せて下さった議員のみなさま、本当にありがとうございました。

 集会の後半では、名古屋原告の落合晴香さん、名古屋原告15番のお母様、東京原告21番のお母様から、今も症状が改善せずに苦しい日々を過ごしていることを、それぞれの立場からお話しました。

 原告団では、こうした実情をわかりやすく伝えていきたいと考えており、イラストを用いた動画などで、被害者の声を伝える工夫を進めています。今回の集会では、そうした進行中の取り組みについても多くの参加者の皆さんにお伝えすることができました。

原告団有志で作成中の動画より
原告団有志で作成中の動画より

 

 HPVワクチン名古屋訴訟支援ネットワークの長南謙一代表からは、HPVワクチン被害者が薬害の副作用としての補償を受けることができていない実情を集約した研究結果に基づき、医薬品全体における補償の支給決定率と比較して、HPVワクチン被害者への補償が大幅に低くなっているという問題点の指摘を指摘しました。

長南ら;医薬品副作用被害救済制度における HPV ワクチンの副作用給付状況について(医薬品情報学2020 年 22 巻 1 号 p. 1-6 )より
長南ら;医薬品副作用被害救済制度における HPV ワクチンの副作用給付状況について(医薬品情報学2020 年 22 巻 1 号 p. 1-6 )より

 同ネットワークでは、こうした実情を広く社会に知らせるために、7月31日に三重県において学習会を開催します。こうした催事の準備状況について、同ネットワークの加藤考一世話人から、集会参加者のみなさんに説明し、引き続きのご参加とご支援を呼びかけました。

 集会の最後には、名古屋原告9番本人から、被害の実情をお話し、さらなるご支援を呼びかけました。

 原告が日々副作用と闘いながら懸命に日常生活を送っている様子が、多くの方に伝わったと思います。

 次回の名古屋訴訟期日は8月25日です。是非今回同様に報告集会へご参加いただけることを願っております。

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