自民党の議員連盟が他団体とともに田村厚生労働大臣に対してHPVワクチンの接種勧奨再開等を要請したことを受け、HPVワクチン薬害全国原告団・弁護団は、2021年4月15日、自民議連と厚労大臣に対して要請書を提出しました。
要請書では、自民議連の提出した要請書には子宮頸がん罹患率・死亡率に関する明らかな事実誤認を含むものであることを指摘し、厚労大臣宛て要請書では勧奨再開が許されないことをあらためて強く伝えるとともに、自民議連に対しては、被害者のヒアリングを行って被害者の声に耳を傾けてほしいと要請しました。
各要請書本文を以下に掲載しました。
この問題についての原告からの動画メッセージとあわせてご覧下さい。
【要請書ダウンロード】
2021年4月15日
厚生労働大臣 田村憲久 殿
要請書
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
去る3月29日、厚生労働大臣は、自由民主党HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟他から、HPVワクチンの積極的勧奨再開等を求める要望書の提出を受け、「この間に積み上がったエビデンスは非常に重く受け止めている」等と発言したと報道されています。
しかし、議員連盟の要望書は、子宮頸がんの年齢調整罹患率及び年齢調整死亡率は2010年代以降はほぼ横ばいであり、20代~30代でも近年は減少傾向であるにもかかわらず、「罹患率・死亡率が共に増加しており、特に20代から30代の女性で多い」と記載している点をはじめ、子宮頸がんの疫学的状況、HPVワクチンの有効性及び安全性に関する事実認識を誤っています。
また、議員連盟の要望書が近年の積み重なったエビデンスとして列挙する論文には、いずれも大きな限界があります。大臣が積極勧奨中止を決断された2013年6月以降、積極的勧奨を再開すべきエビデンスは、なんら積み上がっていません(詳細は別添の議員連盟に対する原告団・弁護団の要請書をご参照ください)。
2013年6月以降に積み重なったエビデンスとして、大臣が真に重視すべきは、HPVワクチンの有害事象報告の頻度が他の主要な定期接種ワクチンの平均の約8倍、救済制度における死亡・障害の認定が他の主なワクチンの平均の約15倍と高率であるというデータ、実際に副反応患者を診察した国内外の医師らによって明らかにされた自律神経、感覚、運動、認知など多系統の症状が重層的に現れる副反応の病態についての研究や自己抗体検出などの他覚的検査所見や動物実験結果など、HPVワクチンの危険性を示す研究の成果です。
子宮頸がんの予防は私たちの願いでもあります。しかし、その方法としては、子宮頸がんの罹患率・死亡率を減少させることが科学的に実証されている子宮頸がん検診を重視すべきです。HPVワクチンが子宮頸がんを予防する効果は実証されておらず、HPVワクチンを早期に導入し、高い接種率を誇るイギリスやオーストラリアにおいては、ワクチン接種世代において、子宮頸がんが増加する傾向にすらあります。
副反応被害者たちは、ワクチン接種後の副反応症状に苦しみ続けています。未だ誰に副反応が出るのか分からず、治すための治療方法も確立していません。また、協力医療機関は十分に機能しておらず、被害者を詐病扱いする医師もいます。
救済も極めて不十分です。これまで副作用被害救済制度により、374件の支給決定がなされ、うち累計45件の障害認定がありますが、判定不能として救済されない例が跡を絶ちません。中学生・高校生のときに被害を受け成人になった被害者たちの就労の支援も全く不十分です。そのうえ、被害の訴えが子宮頸がんの増加を招き社会に害をなすかのように批判されることにより、語り尽くせない苦痛を強いられています。
要するに、国民が安心してHPVワクチンを接種できるという状況にはなく、副反応被害者となった途端に幾重にも厳しい立場におかれるという環境は2013年当時と何ら変わりません。
HPVワクチンの積極的勧奨を再開すれば、原告らと同様の有害事象に苦しむ人々を生み出すことになります。わたしたちは、それを座視することはできません。
HPVワクチンの接種に関する積極的勧奨を再開しないよう、強く要請します。
以上
2021年4月15日
自由民主党HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟 御中
要請書
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
貴議員連盟が、令和3年3月29日付で厚生労働大臣に提出された「HPVワクチンの積極的勧奨再開の要望」(以下、「要望書」といいます)について、以下のとおり意見を述べるとともに、被害者のヒアリングを要請します。
1 要望書の記載の問題点
要望書の記載には、看過し難い誤りがあると言わざるを得ません。
詳細は添付補足資料のとおりですが、以下にその要点を記載します。
(1)子宮頸がんの年齢調整罹患率及び年齢調整死亡率は、2010年代以降はほぼ横ばいであり、20代~30代でも近年は減少傾向です。「罹患率・死亡率が共に増加しており、特に20代から30代の女性で多い」とする要望書の記載は近年の統計データに明らかに反します。
(なお、1995年当時と比較すれば増加しているといえますが、そのような昔のことを述べていると読むことは到底困難です。)
(2)HPVワクチンが子宮頸がんを予防する効果は実証されておらず、HPVワクチンを早期に導入し、高い接種率を誇るイギリスやオーストラリアにおいては、ワクチン接種世代において、子宮頸がんが増加する傾向にすらあります。
子宮頸がんの予防は私たちの願いです。しかし、その方法としては、子宮頸がんの罹患率・死亡率を減少させることが実証されている子宮頸がん検診を重視すべきであり、未だ子宮頸がんそのものの予防効果が実証されていないHPVワクチンの積極的勧奨が行われていないことのみをもって「適切に予防が図られているとはいえない」と評価するべきではありません。
(3)要望書が近年の積み重なったエビデンスとして列挙する論文には、いずれも大きな限界があり、積極勧奨の再開を求める根拠たり得ません。
(4)接種の積極勧奨の中止を決めた2013年からの積み重なったエビデンスとして真に重視すべきは、HPVワクチンの有害事象報告の頻度が他の主要な定期接種ワクチンの合計の約8倍、救済制度における死亡・障害の認定が他の主なワクチンの平均の約15倍と高率であるというデータ、実際に副反応患者を診察した国内外の医師らによって明らかにされた自律神経、感覚、運動、認知など多系統の症状が重層的に現れる副反応の病態についての研究や自己抗体検出などの他覚的検査所見や動物実験結果など、HPVワクチンの危険性を示す研究の成果です。
以上の点を踏まえ、認識を改めていただくよう要請する次第です。
特に(1)については、国民に誤った情報を流布することになりますので、訂正を求めます。
2 被害者の実態についてのヒアリング要請
(1)副反応被害者たちは、ワクチン接種後の副反応症状に苦しみ続けています。
誰に副反応が出るのかも分からず、治すための治療方法も確立していません。また、協力医療機関は十分に機能していません。
救済も極めて不十分です。これまで副作用被害救済制度により、374件の支給決定がなされ、うち累計45件の障害認定がありますが、判定不能として救済されない例が跡を絶ちません。中学生・高校生のときに被害を受け成人になった被害者たちの就労の支援も全く不十分です。
被害者たちは、他の定期接種ワクチンのほとんどを接種してきたにもかかわらず、一部のHPVワクチン推進論者から「反ワクチン」といったレッテルを貼られ、被害の訴えが子宮頸がんの増加を招き社会に害をなすかのように批判されることにより、語り尽くせない苦痛を強いられています。
要するに、国民が安心してHPVワクチンを接種できるというものではなく、副反応被害者となった途端に幾重にも厳しい状況におかれるという環境は2013年当時と何ら変わりません。現在、自治体によるリーフレットの個別配布がなされていますが、以上のような実態を踏まえた情報提供がなされているとはいえません。
(2)要望書では、要望事項2において「ワクチンの予防効果とワクチン接種後の有害事象に関する医学的に正確な情報提供に努めると共に、ワクチン接種後の有害事象に対しては、自治体と連携しつつ適切な相談・診療体制の構築など不安に寄り添った丁寧な対応ができるようにすること」とされています。
議連の先生方には、国民の声に耳を傾ける国会議員として、このような被害者の実情を知っていただきたく、被害者からのヒアリングの機会を設けていただくよう要請いたします。
以上