HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、本日、厚生労働大臣に対し、厚生労働省のホームページ上で、HPVワクチンの積極的な接種勧奨が今も中止されていることが一見して分かるように記載されていないのは、国民を欺く行為であり、分かりやすく明記するよう要請しました。
2020(令和2)年12月25日
厚生労働大臣 田村 憲久 殿
HPVワクチンに関するホームページ記載についての要請書
―積極的勧奨中止を隠さず国民に分かりやすく知らせてください―
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
代表 酒井 七海
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 水口真寿美
同 山西 美明
<連絡先> 東京都千代田区二番町12番地13
セブネスビル3階
樫の木総合法律事務所内
電話03(6268)9550
https://www.hpv-yakugai.net/
<要請の趣旨>
厚生労働省のHPV感染症のホームページ記載について、国がHPVワクチン接種の積極的勧奨を中止していることを隠さずに、国民に分かりやすく明記する対応を直ちにとるように求めます。
<要請の理由>
1 積極的勧奨中止は国民の自己決定権にかかわる重要な情報であること
HPVワクチンについては、副反応に関して国民に十分な情報提供ができないという理由で、2013(平成25)年6月から、定期接種ワクチンでありながら接種の積極的な勧奨を中止するという異例の措置が続いています [i]。
国が接種の積極的勧奨を中止しているワクチンであるという情報は、国民がHPVワクチン接種を受けるかどうかの意思決定をするための重要な情報です。
したがって、国民の自己決定権を保障するために、国が接種の積極的勧奨を中止しているという情報は、分かりやすく提供されなければなりません。
2 積極的勧奨中止の事実が国民に容易に分からないようにされていること
ところが、厚生労働省は、本年10月に改訂した新リーフレットにおいて、HPVワクチンの積極的勧奨を中止している旨の記載を削除しました(図1)。
また、厚生労働省のホームページのHPV感染症の特設ページ [ii]においては、一見して明白に積極的勧奨が中止されていることが分かるように「積極的にはお勧めしていません」と記載された2013(平成25)年6月作成のリーフレット(図1参照)が、すくなくとも本年8月までは掲載されていました(図2①)が、現在はこれが削除されており、新リーフレットだけが掲載されています(図3①)。
しかも、現在の特設ページの冒頭には「定期接種が行われています」と記載されていますが、本来はそれに続けて説明されるべき積極的勧奨中止に関する情報が記載されていません(図3②)。
現在の特設ページでは、「HPVワクチンに関するQ&A」をクリックし、さらに下の方にあるQ24~26までスクロールした人だけが、ようやく積極的勧奨中止に関する質問に行き当たるという現状にあります(Q24~26をクリックしても回答が展開されません)。
以上のとおり、国民が厚生労働省作成のリーフレットや前記ホームページを見ても、国がHPVワクチンについて積極的勧奨を中止していることは、容易に認識できません。
3 国民を欺く行為であること
(1)厚生労働省は、本年10月9日付通知 [iii] によって、地方自治体に対して、新リーフレットの個別送付を求めています。新リーフレットが「情報提供を装ったアンフェアな接種勧奨」というべきものであり、多くの問題点があることは、本年7月28日付の原告団・弁護団の意見書 [iv] で指摘したとおりです。積極的勧奨の中止に関する記載を削除したことは特に問題であり、その不当性は図1に示したリーフレットの記載の変遷から明らかです。
(2)また、ホームページについても、前記のとおり一見して明白に積極的勧奨中止が分かる2013(平成25)年6月のリーフレットを削っただけでなく、少なくとも本年8月までは、「子宮頸がん予防ワクチンに関するQ&A」に加えて積極的勧奨中止の点に特化した「子宮頸がん予防ワクチン接種の『積極的な接種勧奨の差し控え』についてのQ&A」が並記されていた(図2②及び図3③)のに、現在は、積極的勧奨中止に特化したQ&Aを廃止して一本化し(図3④)、積極的勧奨中止についての情報は前記のとおりQ24~26という目立たない場所に移動されてしまっています。
(3)以上のリーフレットの記載の変遷、厚生労働省の前記ホームページの現状と改定経過を総合すれば、厚生労働省は、HPVワクチンの積極的勧奨中止を、国民に対し、一見して分かるようには知らせないという方針を立てて対応をしていると言わざるを得ません。
これは国民を欺く行為です。厚生労働省の審議会に提出された調査結果では、国が積極的勧奨を中止しているという情報は、接種対象者のHPVワクチン接種に関する意思決定に影響を与える重要な情報であることが示されています [v]。このような重要な情報を隠して、国民にHPVワクチン接種の判断を求めることは到底許されません。
4 結論
私たちは、前記7月28日付意見書で新リーフレットの撤回を求めています。
加えて、以上のとおり、国が接種の積極的勧奨を中止していることを隠さずに、ホームページで分かりやすく明記する対応を直ちにとるように求めます。
以上
[i] 厚生労働省勧告 平成25年6月14日健発0614第1号
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/kankoku_h25_6_01.pdf
[ii] 厚生労働省ホームページ「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
[iii] 厚生労働省通知 令和2年10月9日健発1009第1号、同健健発1009第1号
https://www.mhlw.go.jp/content/000680905.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000680908.pdf
[iv] HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団「HPVワクチン リーフレット改訂案に対する意見書―『情報提供を装ったアンフェアな接種勧奨』の撤回を求める―」
https://www.hpv-yakugai.net/app/download/8022079054/200728%20statement-leaflet-unfair.pdf?t=1603155570
[v] 令和元年8月30日厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)参考資料4「リーフレットのわかりやすさに関する調査報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000541831.pdf