合同会議後、直ちに抗議の会見を実施
2020年9月25日(金)午後2時より、予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議が開かれました。
前回7月17日の合同会議に引き続き、HPVワクチンに関する国のリーフレットの改訂が議題となり、最終的に座長一任とされたものの、リーフレット改訂案はほぼ認められ、自治体を通じて接種対象者に個別送付をするとの方向性が提示されました。
ただでさえ不充分な現行リーフレットをさらに不当な内容に変更し、しかも、積極的接種勧奨を中止するとした国の方針は全く変更されていないのに、「周知」という名目で自治体から個別送付することは、全く許される施策ではありません。
そこでHPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、合同会議終了後、厚生労働省内において、合同会議の示す方針に反対する記者会見を行いました。
リスクを伝えないリーフレットの個別送付は許されない
本日の会見では、まず、小池純一弁護士から、本日の合同会議で改訂の方向性が確認されたリーフレットの内容と今後の使用方法の、双方が不当であることを解説しました。
本日確認されたリーフレットの内容は、他のワクチンと比較しても極めて多数の副反応症例が報告されているHPVワクチンの危険性を正しく伝えるものとなっていません。しかも、従来のリーフレットには記載されていた、国が積極的な接種勧奨を一時中止していることについての記載がカットされる一方で、リーフレットの読者がHPVワクチンを接種しなければならないと思ってしまうような記載が大幅に増えているという不当なものとなっています。
こうした点は、本年7月28日に全国原告団・弁護団が発表した意見書において、すでに詳細に指摘をしたのですが、被害者が指摘するこうした問題点は、本日の合同会議を経ても、全く改善されないままとなっています。
しかも、こうしたHPVワクチンのリスクを正しく伝えない接種促進に偏った内容のリーフレットが、自治体を通じて対象者に個別に送付されてしまった場合、受け取った側からすれば、それが単なる「周知」なのか、それとも積極的な接種勧奨なのかは、区別をすることは困難です。
小池弁護士からは、今後、自治体に対して、こうした不当な内容のリーフレットを個別に送付しないように、全国原告団・弁護団として働きかけを進めていく予定であることを説明しました。
全国原告団が作成したリーフレットを公表
河村文弁護士からは、原告さん自らが描いたイラストで構成された全国原告団作成のリーフレット「子宮頸がん(HPV)ワクチンが私たちの世界を変えた」を作成したことを報告しました。そして、「国のリーフレットではわたしたちの被害が伝わらない」「同じ思いをする人が増えてほしくないから自分たちの症状をわかりやすく伝えていきたい」という被害者の切実な思いを、イラストを交えた原告団のリーフレット等によって、多くの人に伝えていきたいと考えていることを説明しました。
実態の伝わらない国のリーフレットに対する被害者本人の思いは...
会見に出席した東京原告の伊藤維さんは、私たちのような被害を増やしたくないと思っているのに、これを個別に配布して家庭で読まれたら、多くの人がうたなければいけないのかと思ってしまうのではと危惧していると発言しました。
また、維さんは、症状が出現してから10年が経過しているけれど、被害の救済は受けられていないし、協力医療機関に行っても「何もしてあげられることはない」と言われて追い返されてしまうという実情にあり、そうしたことを伝えていく必要があるはずで、こうした情報が伝わらないリーフレットを個別に配布することは許されない思うと述べました。
同じく会見に参加した東京原告15番の女性は、救済制度で認められていない人もたくさんいるし、一番の救済は身体を治してもらうことなのに、そんな簡単なことも国の人にわかってもらえないことに対して残念に感じていることを伝えました。そして東京15番さんは、接種で副反応が出たとしても、協力医療機関は機能していないし、治せるような治療方法もないということが伝わらないリーフレットでは、正しい情報提供とは言えないと感じていることを、実際に協力医療機関に通い続けてきた自分の体験に基づいて説明しました。
最近の被害者家族からのメッセージ~安全だからと強く勧められて接種
HPVワクチンによる副反応被害は、過去の問題ではありません。最近でも同様の症状を呈する被害者が生まれてしまっています。
本日の会見では、2017年になって接種を受けたことで重い副反応に苦しむようになった静岡県在住の女性の母から、弁護団に寄せられたビデオメッセージも上映しました。
被害を受けた女性の母は、普段は薬剤師として調剤業務に従事しています。長女にはHPVワクチンを接種させたものの、その後重い副反応が出たという報道を見て、次女への接種はしばらく見合わせていたそうです。
しかし、その後医療機関に接種を勧める大きなポスターが貼られていたり、保健所などからは、名古屋での大規模調査で因果関係がなかったと証明されていると説明され、医師からも今ならギリギリ定期接種として受けられるから補償も有利だと強く勧められ、16歳になった次女にガーダシルの接種を受けさせました。
初回接種後から、次女には体調不良が見られ、2回目の接種後は、発熱やひどい頭痛、腹痛、全身の痛みといった激しい症状が出現し、3回目の接種は中止となりました。
皮膚症状が治まった時点で保健所には「軽快」と報告されてしまいましたが、その後も、次女は、睡眠障害や生理不順、簡単な計算ができない、読み書きにも支障が生じるといった様々な症状に見舞われました。
こうした症状への対応を求めて、母は次女を協力医療機関に連れて行きましたが、診察を担当した医師は、自分の病院が協力医療機関に指定されていることを知らなかったそうです。しかも、同様の患者の診察経験もないと言われてしまい、協力医療機関を受診した意味を感じることはできませんでした。
18歳になった次女の体調は今も回復しておらず、将来の見通しが全く立たない状態です。
この母の体験を記したメッセージ全文は、以下のとおりです(PDFはこちらからダウンロードできます)。
被害者の思いを届けたい~これ以上被害を生み出さないために
本日の合同会議で確認された方針で国のリーフレットの個別配布が進められた場合、こうした被害者があらためて急増することが強く危惧されます。
原告団・弁護団では、HPVワクチンの危険性と実際の被害者の置かれた実情が、接種の対象者とされる中学生や高校生の女性のみなさんに正しく伝わるように、様々な工夫を続けていきたいと考えています。
どうか引き続きご支援下さい。