厚生労働省 御中
厚生労働大臣 加藤勝信 殿
9価HPVワクチン(シルガード9)の承認審査に関する意見書
2020(令和2)年4月15日
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
代 表 酒井 七海
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 水口真寿美
共同代表 山西 美明
<連絡先> 千代田区二番町12番地13 セブネスビル3階
樫の木総合法律事務所内 電話03(6268)9550
https://www.hpv-yakugai.net/
<意見の趣旨>
1 9価HPVワクチンについては、その安全性が十分に確認されない限り、承認に反対します。
2 9価HPVワクチンに関し、Web会議と併せて電子メールを用いた持ち回りで行うとする薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会の審議を直ちに中止してください。
3 9価HPVワクチンについては、承認前に審査報告書及び申請資料概要を公開して意見(パブリックコメント)募集を行うとともに、HPVワクチンの副反応被害者や研究者も参加する公開の検討会を開催することを求めます。
<意見の理由>
1 はじめに
厚生労働省は、MSDが承認申請していた9価のHPVワクチン「シルガード9」(海外では「ガーダシル9」の商品名でも販売)について、本日、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会による審議を、Web会議と併せて電子メールを用いた、所属委員のみでの持ち回りで行うと発表しました。
これに対し、私たちは、HPVワクチンによる重篤な副反応被害を受け、十分な救済を受けられずやむなく訴訟に至った原告団と、その弁護団として、強く抗議するとともに、以下のとおり意見を述べます。
2 9価HPVワクチンの承認と定期接種化について
(1)日本におけるHPVワクチンとしては、既にMSDのガーダシル、GSKのサーバリックスが承認されていますが、これらによって、頭痛、全身の疼痛、光過敏、音過敏、嗅覚障害、激しい生理痛、脱力、筋力低下、不随意運動、歩行障害、倦怠感、集中力低下、学習障害、記憶障害、発熱、月経異常、過呼吸、睡眠障害など、全身に及ぶ多様な副反応が一人の患者に重層的に表れることが報告されています。その深刻さは、他の定期接種ワクチンと比較したデータからも明らかです(別紙1、2)。
そして、承認から10年近くを経過した現在においても、どのような人に発症するかは分からず、治癒が期待できる有効な治療法はありません。被害者が安心して受診できる医療機関は乏しく、差別的な対応をされる例が後を絶ちません。接種者の多くは2010年から開始された国の緊急促進事業(公費助成)によってHPVワクチンを接種し、成人となる年代を迎えていますが、進学や就職も満足にできず、先の見えない不安を抱えながら、もう10年もの間、辛い症状に耐え続けています。
(2)9価HPVワクチンは、L1タンパクを主成分、アルミニウムをアジュバントとし、高い抗体価を長期に維持することを目的として設計され、その基本的成分と設計をガーダシルと同じくしています。したがって、ガーダシルと同様の副反応が生じることは容易に推測でき、現に9価HPVワクチンを先だって承認している国では、深刻な副反応に苦しむ被害者が多数生まれており、その副反応症状はガーダシルと異なりません。
自分たちと同じ被害を繰り返さないで欲しいということが、被害者たちの願いです。既に承認されているHPVワクチンの被害者の治療と救済を置き去りにしたまま、新たな被害を生むことになる同種のHPVワクチンの承認を認めることはできません。
その安全性が十分に確認されない限り、9価HPVワクチンを承認することに強く反対します。
3 承認審査のあり方について
(1)9価HPVワクチンについては、承認申請からPMDAの審査に5年近くが費やされ、これは異例の長期であると指摘されています。しかし、先行したガーダシル及びサーバリックスの安全性が確認できず、未だに積極的な接種勧奨の中止措置がとられていることからすれば、当然のことと考えられます。
そして、このような状況からすれば、薬事・食品衛生審議会においても、慎重な審査が求められていることは明らかです。
(2)ところが、前記の通り、厚生労働省は、9価HPVワクチンについての薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会の審議を、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由として、Web会議と併せて電子メールを用いた、所属委員のみでの持ち回りで行うとしています。これでは十分な審議は到底期待できません。
PMDAにおける審査に5年を要した本剤を、なぜ新型コロナウイルス問題によって緊急事態宣言が出されている最中に、薬事食品衛生審議会の審議に付さなければならないのか。緊急性や合理的理由を見いだすことはできません。この対応は、私たちをはじめとする被害者の存在を無視するものであり、断じて認めることはできません。
この審議は直ちに中止するよう求めます。
(3)HPVワクチンについては、副反応被害が多発して積極的接種勧奨の中止がなされたときから、接種対象者や保護者に対する情報提供の重要性が論じられています。9価HPVワクチンの承認審査においても、国民への情報提供の観点から、類薬であるガーダシル及びサーバリックスが引き起こしている深刻な副反応の実態、9価HPVワクチンに関する海外の市販後の副反応の実態なども踏まえた、透明性の高い審査が求められます。
この点、かつて薬害をもたらしたサリドマイドが、多発性骨髄腫の治療薬として承認申請された際に、承認前に審査報告書及び申請資料概要を公開の上でパブリックコメントの募集がなされるとともに、サリドマイド被害者も参加した公開の検討会が開催されたことが参考とされるべきです。
9価HPVワクチンについても、承認前に審査報告書及び申請資料概要を公開して意見(パブリックコメント)募集を行うとともに、HPVワクチンの副反応被害者や研究者も参加する公開の検討会を開催することを求めます。
以上