冷気が極まって最も寒さがつのるとされる大寒の日。HPVワクチン薬害九州訴訟の一日は、ポケットティッシュ配りからスタートしました。
天神パルコ前には、原告とその家族、弁護団のあわせて18名が参加し、街行く人にポケットティッシュを配りながら裁判への支援を呼びかけました。
わざわざ立ち止まって受け取ってくださる方が多く、250個用意したポケットティッシュはわずか15分ほどでなくなりました。
その後行なわれた福岡地方裁判所の門前集会には、原告とその家族、弁護団、支援の方々の60名を超える方々が駆けつけました。
集会ではリレートークが行なわれ、HPV薬害訴訟九州訴訟支える会・沖縄の世話人であるわたなべゆうこさん、薬害スモン訴訟原告の草場佳枝さん、薬害肝炎訴訟の原告さん、支える会代表で薬剤師の猿渡圭一郎さんから、それぞれ連帯のあいさつがありました。
「裁判をすることを恥ずかしがる必要はない。悪いことをしているわけではないので、プライドを持って闘いましょう。」
草場さんの、どんよりとした雲を吹き飛ばすような力強いメッセージが非常に印象的でした。
こうした暖かいメッセージに支えられて、九州訴訟原告団代表の梅本邦子さんが、この裁判を勝ち抜いていく強い決意を固めていることを、来場者に伝えました。
リレートークを終えると、「取り戻そう!少女たちの未来を」と書かれた横断幕を先頭に、福岡地方裁判所に向かって入廷行動を行ないました。
この一歩一歩が、原告の思いが裁判所に届く瞬間につながっているはずだ。そう信じて、みんなで進みました。
福岡地方裁判所1階の101号法廷。
原告側、被告側ともに、三列用意された椅子に弁護士がびっしりと座り、傍聴席にはたくさんの傍聴者が開廷を待ちました。
真っ黒の法服に身を包んだ裁判官3人が入廷すると、法廷にピリッとした空気が流れました。
裁判官席の脇に置かれた事件ファイルは、移動式のラック2台分、数十冊にのぼります。事件ファイルの分厚さが、これまでの闘いの道程の険しさを物語っています。また、事件ファイルには付箋がびっしりと付けられている様子で、3人の裁判官がこの事件について真剣に向き合ってくれているのだと感じました。
残念ながら、意見陳述を予定していた九州原告24番さんは、体調不良のため期日に参加することがかないませんでした。自らの思いを裁判官に伝えるための唯一の場である法廷にすら出てくることができないという事実が、HPVワクチンによる副反応被害の深刻さを物語っています。
法廷では、佐川民弁護士が、24番さんの意見陳述書を代読しました。
アイスピックで頭を刺されるような激しい頭痛。言葉がまとまらなかったり、名前が思い出せなかったり、大好きだった化粧の仕方も分からなってしまうといった記憶障害。あまりに酷い症状は、24番さんが母親に対して首を切って楽にしてほしいと頼んでしまうほど、深刻なものでした。
24番さんは、希望する地元の高校への進学は諦め、通信制の高校に進学しましたが、別の高校に進学した幼なじみから、入学式で新しい友達と写っている写真がSNSで送られてきました。24番さんは、自分だけ取り残されてしまっていることにショックを受け、携帯電話に登録していた友人の連絡先を全て消去してしまいます。
健康な体だけでなく、夢や大切な友人までも失ってしまう非常に厳しい現実。今日もまた一つ、HPVワクチンによる副反応被害の実態が明らかとなりました。
続いて、緒方枝里弁護士より、原告の症状が心因性でもなく精神疾患でもないことを説明する意見陳述が行なわれました。
この意見陳述では、原告らのような重篤な副反応被害に苦しむ患者を数多く診察してきた国内の医師らの見解を引用しながら、原告の実際の症状を見たわけでもないのに精神疾患等と決めつける被告企業の主張の説得力の乏しさを、公開の法廷で浮き彫りにすることができたと思います。
福岡県弁護士会館2階ホールに場所を移して行なわれた報告集会には、大勢の方から、法廷の感想や連帯の挨拶をいただきました。
報告集会では原告7番さんが母親に宛てた手紙も紹介されました。
彼女は、いつも母親と一緒に弁論期日に出席していますが、現在、鹿児島大学病院に入院中とのことで、母親に内緒で手紙を寄せてくれたのでした。そこには、いつも自分を支えてくれている家族への感謝の言葉が綴られていました。
「月日が経つのは早いもので、裁判も入院治療も、そして年齢も何度も重ねました。成人もし、社会の1人となりました。
しかし後ろを振り返ってみれば自分や家族の辛さなどしか私の記憶には残っていません。
そして悔しく悲しい事に何も前には進んでいません。
ただ時間だけが先にどんどん進んでいくだけで、気付けばいつの間にか私は22歳になり今年で23歳になります。」
「被害者の親はワクチン接種後からどんどん体調が悪くなっていく娘を1番近くで見てきています。
原因不明と言われれば色んな病院を渡り歩き、詐病だとも言われ心をズタズタにされたり、原因が分かれば治療ができる病院に遠くても連れていったり、家に帰ればご飯を作り、洗濯掃除、介助や見守り、娘の治療費、自分達の生活費のための仕事など、言い出せばキリがないほど漠大な負担を背負い、どれだけ親は娘の為に自分の身体に鞭を打って酷使しているのか。
どこの家庭でも同じような事が起きています。親の楽しみであっただであろう子供の成長や成人、手がかからなくなったら趣味など色々な事がやれたでしょう。しかし今私達は親の自由、人生すらも縛っています。」
「家族みんな限界まで頑張っているのに、周りには見えないので家族同士しかそれぞれ頑張っている事を認め合うことしかできません。
だからこそ被害者は私ではなく家族全員だと思っています。
私は今家族に頼らないと何も出来ません。
今日、この今の時間も私の自由の為に身を削ってくれています。
頑張っているのは私だけでは無く家族全員です。
なのでどうか今日だけは勝手な私のわがままに付き合って頂き、原告さんや原告家族さんに声をかけるときにはどうか『頑張ってね。』ではなく、『頑張ってるね。』などと言ってください。
スポットは毎回私達原告本人にあたりますが、皆さんが見えていないところで家族がとても頑張っている事を家族以外にも知って欲しい。
そしてその見えない頑張りを家族以外にも既に頑張っている事を認めて欲しいのです。」
原告の目線でなければ気づくことのできない家族の苦労の一端に触れ、心が揺さぶられるようでした。
報告集会は、九州原告の庵原佑香さんの「ちょっとでもリハビリして体力をつけなさいと言われているので、なるべく歩くように頑張っている。端から見れば元気に見えるが、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返していて、辛い日は本当に辛いです。長い闘いになりますがご協力をよろしくお願いします。」との力強い言葉で終了となりました。
終わってみれば、大寒の日であることを忘れさせてくれるような、熱い熱い一日でした。
HPVワクチンの副反応で苦しむすべての被害者とその家族の方々の思いが報われる日が一日も早く訪れることを信じて止みません。
次回の法廷は、4月27日(月)午後2時開廷です。是非傍聴にお越し下さい。