平成31年2月13日、HPVワクチン薬害東京訴訟第9回口頭弁論が開かれました。
本日も口頭弁論期日に先立ち、支援ネットワークの方々が中心となって、有楽町駅前広場でこの被害に対する理解と支援を呼びかけるチラシを配布しました。
今回は、バレンタインデー前日ということで、チラシとともにチョコレートを配布するなど、支援の輪を広げるために工夫を凝らしました。
そのかいもあってか、真冬の寒さの中でも立ち止まってチラシを手に取ってくださる方も多く、この被害への関心・理解が深まったのではないかと思います。
裁判所前でのリーレートークでは、まず、東京弁護団副代表の阿部弁護士が、これまでの2年半にわたる弁護団の活動が被告国や製薬企業を追い詰めていることを報告し、引き続きの支援を呼びかけました。
支援ネットワークの隈本代表世話人からは、支援ネットワークの街宣活動では、数多くの通行人がチラシを受け取ってくれたことを報告しました。
さらに、原告番号3番の父からは、被害者である娘が体調不良のため裁判に来ることができない現状や、さらなる支援が必要であることを来場者に伝えました。
最後に元参議院議員のはたともこ氏からは、この裁判が、日本の少年少女をワクチンの害から守っている、国はなぜ被害者の声に耳を傾けないのか、わずかな人数であれば被害が出るのはやむを得ないという上から目線の態度を許してはならない、応援メッセージをいただきました。
午後2時に開廷した口頭弁論では、最初に東京原告6番の伊藤維さんが意見陳述を行いました。
幼少のころからバイオリンを学んだ維さんは、音楽高校に入学して本格的にバイオリンに取り組もうとした時期にサーバリックスの3回目の接種を受けましたが、その後、両膝の痛みや立ちくらみといった異変が現れました。痛みのために駅で動けなくなり、母に抱えられるようにして帰宅したということもありました。バイオリンを持ち上げるだけでも腕が痛くて仕方がないという状態でも、維さんは、痛みをこらえて練習を続けましたが、全身の痛みは悪化する一方で、寝ても覚めても激痛にのたうち回り、学校に通うことも難しくなってしまいました。
こんなに辛い毎日がずっと続くなら死んでしまった方がよいとまで思い詰める維さんでしたが、学校関係者の理解と支援の下で、進級できるよう努力を重ねました。音楽の授業の際、維さんは、教室の一番後で痛みをこらえて、椅子を並べた上に横になって授業を受けたそうです。
母の助けを受けて出場したコンクールでは、車椅子で舞台袖まで行き、痛みをこらえてステージに上がり、何とか立った姿勢で演奏を終えましたが、演奏終了後は歩くこともままならず、背負われて舞台から退場したこともありました。
陳述開始にあたって裁判長から着座を進められても、痛みが出るまでは立って話をしますと述べて、証言台の前に起立して話を始めた維さんでしたが、意見陳述の後半には、痛みのために立位を続けることができなくなり、着座した上で、ワクチンを作った製薬会社には、こうした副反応を研究する責任や、研究者の支援を行う責任があるはずであると、厳しい表情で指摘しました。
そして、最後に、このような体となってしまった過去や時間は取り戻せないけれど、被害者は皆ひとりひとり前を向いていこうと頑張っており、被害者がひとりの人として生きていけるよう、恒久的な支援を求めていることを裁判官に伝えて、陳述を終えました。
続いて、東京弁護団の針ヶ谷健志弁護士より、被告グラクソ・スミスクライン(GSK)社と被告MSD社が、積極的なロビー活動等を通じてまさに国と一体となってHPVワクチン接種緊急促進事業という違法な事業を実施した共同不法責任を負うことに関連して、両社によるHPVワクチンの広告宣伝活動が著しく不適切であったことを、裁判官にスライドを示しながら意見陳述を行いました。
製薬企業が医学的知識の乏しい一般消費者に対して直接広告を行うこと(DTC広告といいます)は、厳しく規制されています。そんな中、両社は、子宮頸がんという病気自体の恐怖を売り込むという「病気のブランド化」を推し進め、「良い母親はワクチンを接種させる」というメッセージを社会に振りまくことによって、HPVワクチンのマーケティングを推し進めました。
針ヶ谷弁護士からは、GSK社は成人向け抗うつ剤であるパキシルについて、MSD社は関節炎治療薬であるバイオックスについて、米国内で著しく不正な販売促進活動を展開したためにいずれも極めて大きなペナルティを科された前歴があることを指摘し、HPVワクチンについても、両社がこれらの問題事例と同根の不適切なマーケティングを大々的に展開したことを説明しました。
法廷終了後は、東京地裁内の司法記者クラブで会見を行い、伊藤維さんも車椅子で記者の前に座り、法廷での意見陳述を終えた心境などを記者に伝えました。
維さんは、記者からの質問に対し、自分たちの被害をなきものにされたくない、被害を認めてもらい恒久的な支援をしてもらいたい、という思いで法廷に臨んだことを説明しました。
維さんの発したメッセージが、全国の被害者に共通する思いであることを、あらためて感じました。
記者会見と並行して、弁護士会館内では報告集会が行われ、40人以上の方々にご参加いただきました。
東京弁護団の木下正一郎弁護士が原告・被告双方の主張や意見の内容を説明し、法廷でのやりとりなどをお話ししました。
支援者の方々からは、それぞれに応援のメッセージをいただきました。期日に参加した原告やその家族からも、日々続く症状の苦しさや将来に対する不安など、被害者の置かれた実情を報告しました。原告本人が「被害の実態を多くの人に知ってもらうために情報を積極的に広めていきたい」と発言すると、会場には大きな拍手が起こりました。原告と支援の連帯を深め、支援の輪の広がりを実感できた報告集会になりました。
次回の東京訴訟第10回期日は、本年5月22日(水)午後2時開廷です。ぜひ傍聴にお越しください。