車椅子から見た景色を知っていますか?~HPVワクチン薬害東京訴訟第8回期日

 2018年11月7日、HPVワクチン薬害東京訴訟は第8回目の口頭弁論期日を迎えました。

 開廷時刻に先立ち、銀座で恒例の街頭活動を行い、多くの方に傍聴を呼びかけました。

 通りかかった方々の中には、わざわざ近寄って下さって、ビラを受け取って下さる方もいらっしゃいました。原告団・弁護団とも、開廷を前にとても勇気づけられました。暖かい対応をいただきまして、本当にありがとうございました。

 その後、東京地方裁判所前に移動し、秋晴れの空の下、開廷前のリレートークを行いました。

 リレートークでは、全国原告団代表の酒井七海さん(東京原告1番)から、来場された皆さんに、HPVワクチン薬害問題の解決に向けたご支援をいただけるよう、語りかけました。

 本日の法廷では、まず、水口瑛葉弁護士から、HPVワクチンと副反応症状との間には因果関係が認められることについて、意見陳述を行いました。

 水口弁護士は、これまでに蓄積されてきた医学的研究結果を紹介しながら、骨髄検査において患者群の髄液に免疫学的変化が認められており、患者群の自己抗体の陽性率が高いこと、脳血流検査(SPECT)においても患者らの視床と大脳辺縁系の血流低下という活動の低下を示す所見が認められていること、皮膚生検でも無髄神経線維の減少といった所見が確認されていることなどを指摘しました。

 そして、多様な副反応症状と整合するこれらの客観的検査所見を踏まえた形で、複数の研究者らによって、副反応症状が自己免疫性のものである可能性や自律神経障害である可能性が共通して指摘されていることを、提出した準備書面の内容に沿って説明しました。

 続いて、東京原告45番さんが意見陳述を行いました。

法廷での意見陳述を終え、記者会見に出席した東京原告45番さん(左)
法廷での意見陳述を終え、記者会見に出席した東京原告45番さん(左)

 今月で20歳を迎えた原告45番さんの意見陳述は、大人になる節目の、輝かしい年となるはずだったのに、まさか裁判所の法廷で車椅子に座ったまま意見陳述を行うとは思いもしなかったという思いから始まりました。

 彼女は中学1年から2年の間に、ガーダシルの接種を3回受けました。

 接種を決めた一番のきっかけは、「無料接種」と「期間限定」から生じる無言の圧力だったとのことで、学校でも、担任や保健室の先生が、まだ接種していない子に手を挙げさせて早く接種するように何度も注意するため、「未接種は悪」という雰囲気を感じたそうです。

 接種前は大きな病気や怪我もなく、運動会ではリレーの選手として走り、バスケ部に所属して試合に出るなど健康の身体が、ワクチンを接種した後、物忘れ、倦怠感、辛い足の痛みに悩まされることになりました。

 突然頭がかすみ、暗記することが全くできなくなりました。聴力が低下したり、突然イライラと気が立ったり、手に力が入らない日があったり、毎日めまいや立ちくらみがするようになるなど、さまざまな変化が現れました。

 何とか公立高校に進学したものの、高校1年生の8月には、猛烈な足の痛みと倦怠感に耐え切れなくなって部活中に倒れてしまいました。その後、足だけでなく腰や背中、腕、首、頭と次第に痛みが全身に広がり、その年の9月からは車椅子での生活を余儀なくされています。

 

「皆さんは、車椅子から見た景色を知っていますか。太ももの高さ分低い目線から景色だけが流れていきます。まるでテレビをみているかのようです。自分が走っているはずだったコート、皆と踊っているはずだった体育祭の校庭。自分がいるはずだった全ての景色を、ただ傍観することしができない気持ちを知っていますか。」

 

 原告45番さんは、失った日々への思いに時折言葉に詰まらせながらも、終始しっかりした口調で、このように語りかけました。

 

「統計や調査は、私たちの経験より根拠があるのでしょうか。私たちをないものとする人たちは、今も私たちの訴えには下を向き、我関せずです。なぜ私たちは、なかったことにされるかもしれない瀬戸際で声をあげなくてはいけないのでしょうか。

 国が苦しむ国民に手を差し伸べるということ、製薬会社が自らの製品に責任をもつということは、ただの建前だったのでしょうか。
 体の自由は奪われましたが希望まで奪われたくありません。」

 

 原告45番さんは、被害者が置かれた理不尽な状況をこのように説明し、この裁判がワクチン被害者の希望に繋がることを信じますと、力強く訴えました。

 彼女の語る言葉の1つ1つの重さは、法廷で耳を傾けたすべての人の胸に響くものでした。

 

 記者会見と並行して、弁護士会館内では、期日後の報告集会が開催されました。

 報告集会への参加者は50名を超え、被害者の保護者同士が、それぞれのお子さんの症状を説明して、お互いのおかれた状況についての理解を深め合うとともに、共に闘っていこうとの声を掛け合いました。

 集会を通じて、被害者と支援者とが暖かい連帯を育んでいることを、実感できました。

 次回の東京訴訟の口頭弁論は2019年2月13日に開催されます。

 是非多くの方にご来場いただけることを願っています。