2016年12月26日開催の厚労省合同会議において報告された全国疫学調査(研究代表者:祖父江友孝)には、調査対象となる副反応症状を適切に定義していない等の調査の根幹に関わる重大な欠陥があるにもかかわらず、合同会議の審議においては、こうした調査の欠陥が全く指摘されないままとなっています。
そこで、本日、HPVワクチン薬害全国原告団・弁護団は、厚労大臣及び合同部会の部会長ら宛てた要望書を提出しました。
要望事項は次の3点です。
- 調査結果の再検討
- 調査過程の公表
- 質問事項への回答(2017/2/8までに)
- 「HPVワクチン接種後に報告されている多様な症状」をどのような病態と認識しているのか。
- 全国疫学調査の内容について、合同会議での審議以前に厚労省による記者説明がなされ、それに基づく報道がなされたことの不適切性について。
要望書を提出した後、厚生労働省内の記者クラブにおいて、報道各社にも要望の趣旨の説明を行いました。
要望書の全文は次のとおりです。
厚生労働大臣 塩崎恭久 殿
厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
部会長 桃井眞里子 殿
薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会
調査会長 五十嵐隆 殿
全国疫学調査に関する要望書
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団
代表 酒井七海
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 水口真寿美
同 山西美明
<連絡先>
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
〒102-0084 東京都千代田区二番町12番地13
セブネスビル3階
電話03(6268)9550
https://www.hpv-yakugai.net/
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団及び弁護団は、HPVワクチン接種後の副反応の薬事行政における公正な評価と、新たな副反応被害の発生を防止するため、2016年12月26日開催の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議(以下、「合同会議」という)において報告された、厚生労働科学研究「青少年における『疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状』の受療状況に関する全国疫学調査」(研究代表者:祖父江友孝。以下、「本調査」という)に関して、以下の事項を要望致しますとともに、これに対して2017年2月8日までにご回答下さいますようお願い致します。
要望事項
1 調査結果の再検討
(1) 弁護団コメント(添付)に指摘した本調査の問題点その他本調査に対する批判的意見をふまえて、合同会議において再度本調査について審議し、「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を呈する者が、一定数存在した」とする本調査の結論の妥当性について十分な検討を行うこと。
(2) 本調査に基づく「HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を呈する」患者の推計患者数を、HPVワクチン接種後の副反応に関する今後の疫学研究の基礎資料として使用しないこと。
2 調査過程の公表
(1) 本調査開始時に作成された研究計画書(その後変更・改訂等があった場合はそれらも含む)、及び2016年11月10日に完成したとされる解析計画書を公表すること。
(2) 本調査に関する研究班会議議事録を公表すること。
3 質問
以下の質問事項に回答すること。
(1) HPVワクチンの安全性評価において検討対象とされている「HPVワクチン接種後に報告されている多様な症状」をどのような病態と認識されているのか、具体的に明らかにして下さい。
(2) 副反応検討部会桃井眞里子部会長、及び安全対策調査会五十嵐隆調査会長は、本調査結果について合同会議における研究班からの報告と審議がなされる以前に厚生労働省による記者説明がなされ、それに基づく報道がなされることについて事前に了承されていましたか。またこのように合同会議の審議結果を見ないまま作成された記事が報道されることを適切であるとお考えですか。
要望の理由
4 要望事項1(調査結果の再検討)について
本調査結果には、本要望書添付の2016年12月30日付弁護団コメント「全国疫学調査の結果報告(2016年12月26日)について」に記載したとおり、①副反応症状と同様の症状の患者を適切に把握することができるデザインとなっていないため、非接種者にも同様の症状の患者が真に存在しているのか確認できない、②本調査に言う「HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を呈する」患者には、副反応症状とは異なる症状の患者が含まれることとなり、その推計患者数は明らかに過大である、③個別の症状の有症率を見ると、接種歴あり群と接種歴なし群との間に症状とワクチンとの因果関係を示唆する重要な差異が認められるにもかかわらず、これを無視し、両群に差がないかのような印象操作を行っている、といった問題点があります。
これらの問題点は、副反応症状を正しく理解し、それに基づいて調査対象となる副反応症状を適切に定義するという、調査の根幹に関わる点についての本調査の重大な欠陥に起因するものであるにもかかわらず、合同会議の審議において、これらの問題点が全く意識されないまま唯々諾々と本調査の結論が受け入れられたことは、誠に遺憾です。
合同会議において、あらためて、上記弁護団コメントをはじめとする、本調査に対する批判的意見をふまえた審議を行うと共に、本調査に基づく過大な推計値を今後の疫学研究の基礎資料としないことを確認して下さい。
5 要望事項2(調査過程の公表)について
本調査は、副反応症状の厳密な定義を行わないことによって、「HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を呈する」患者に副反応症状とは異なる症状の患者が含まれるようにし、接種歴なし群にも該当患者が出やすくしている点、まとめにおいて、特段の根拠もなく、推定患者数が格段に多くなる「取り扱い②」に基づく推計値を採用している点、接種歴あり群と接種歴なし群との差を殊更に無視し、両群に差がないかのようなまとめをしている点などからすると、はじめから「接種歴なしの人にも副反応症状と同様の症状の患者がいる」、「接種歴あり群となし群に差はない」との結論を得ることを意図して解析方法を策定し、それでも現れてしまった差を糊塗するために報告のまとめを不当に操作した疑いがあります。
本調査にはその公正さに重大な疑問があるといえますので、解析計画書の策定に至る過程、及び報告作成までの研究班の検討過程を公表し、研究が公正になされていることを示して下さい。
6 要望事項3(質問)について
(1) (1)について
本調査のような不当な調査が行われた根本的な原因の一つとして、HPVワクチンの安全性評価において主要な検討対象となっている、副反応報告された症状について、共通の認識がないことが指摘できます。ワクチンとの因果関係の有無に関する意見の相違はさておき、HPVワクチン接種後にどのような病態の患者が発生しているのかを、事実として確認すべきです。
そこで、検討対象である副反応症状がどのような病態であるのかについての、厚生労働省及び合同会議の見解を明らかにして下さい。
(2) (2)について
本調査の結果については、合同会議が開催された12月26日の複数の夕刊に、「非接種でも副反応と同症状」などとして報じられました。14時から16時までという合同会議の開催時間に照らせば、これらの夕刊報道は、合同会議に先立ち同月23日に開催されたという厚生労働省による記者説明に基づき、合同会議の審議内容を見ずに作成された記事であることが明らかです。
このような報道を招く厚生労働省の情報提供のあり方は、合同会議の存在意義を軽視するものであり、不適切であると考えます。
そこで、副反応検討部会長及び安全対策調査会長が、このような事前の記者説明とそれに基づく報道がなされることを事前に了承されていたのか、またこのような報道がなされることを適切と考えるかについて、明らかにして下さい。
以上
※要望書添付資料